児童福祉司・相談員

児童福祉司・相談員とは、児童相談所に勤務している職員で、子どもたちの保護や福祉などについて相談に訪れる親や保護者、または子ども本人に、必要な調査や社会的診断を行なった上で、問題解決のための援助や指導をします。

また時には同じ児童相談所で相談業務を行なっている心理判定員、小児科医、精神科医などと一緒に協力して相談者へのカウンセリングや指導を行ない、問題解決にあたることもあります。

児童福祉司と相談員はどちらも仕事の内容はほぼ同じで、ときにはどちらの職種も「ケースワーカー」と呼ばれることがあります。

児童相談所に寄せられる相談内容はさまざまです。
親・保護者からは病気や離婚、経済的な事情で子どもの健全な養育ができないといった内容の相談、子ども側からは窃盗・傷害などの犯罪や不良行為、自閉症や不登校といった心の問題など、多岐にわたっています。

最近増加傾向にある養育放棄や児童虐待といった複雑な問題に対応するため、児童福祉司・相談員の仕事には、社会学や心理学、福祉に関する知識、ケースワークの技法など専門的な知識が要求されます。

児童相談所は行政機関ですから、ここで働くためには地方公務員試験に合格しなければなりません。
一般行政職として採用された後に児童相談所へ配属される、もしくは定期人事異動によって配属される場合に児童相談所で働くことができますが、自分が児童福祉司の任用条件を満たしていて、児童相談所での勤務を希望しても、実際には必ずしもそのポストにつけるとは限らないのが現状です。

児童福祉司・相談員になるには、誰とでもコミュニケーションがとれる幅広い教養と経験、どんな人の話にも耳を傾けられるやさしさと根気が必要です。

家庭相談員・母子相談員

児童福祉の公的機関として児童相談所があげられます。

児童相談所はその設置数から、管轄範囲が広く、限られた人数の児童相談所職員だけではいろいろな問題に細かく対応しようにも限界があるのが実状です。
一方、福祉事務所内にある家庭児童相談室は人口１０万人に１ヶ所の割合で設置されていますので、小地域を単位としてより早く、より丁寧な対応で問題解決に努めることができます。
そしてこの家庭児童相談室で、相談者に対して問題解決に向けた適切な助言や指導を行なっているのが家庭相談員です。

家庭相談員は、それぞれの親や保護者と面接して相談に応じ、各々のケースに一番ふさわしい解決方法を見つけ出してアドバイスを行ないます。
離婚や死別など、何らかの理由で母子家庭・寡婦となってしまった人の実情を把握し、社会的自立に必要な相談や指導を行なっています。
また何らかの事情があって、福祉事務所まで来ることができない人たちに対しては、手紙や電話を使って相談に応じています。

多くは電話や事務所内での面接によって相談を受け付けますが、時には相談者の方へ出向いて個別の家庭訪問を行ない、悩みを聞きに行くこともあります。
家庭相談員、母子相談員ともに仕事場は福祉事務所となります。

家庭相談員の仕事に就くには、任用条件を満たしたうえで公務員試験に合格する必要があります。
・医師の免許を有する。
・社会福祉主事として２年以上児童福祉の仕事に従事した経験がある。
・大学で児童学、児童福祉学、社会学、社会福祉学、心理学、教育学のいずれかを修了。
以上のいずれかの任用条件を満たしていなければいけません。

採用状況が狭き門であるため、その人がそれまでやってきた職歴や人生経験が採用の際の重要なポイントとなりますので、学校などで児童や福祉について学んでおくほうが有利といえるでしょう。

なお、母子相談員の場合は、必須となる資格や任用条件はありませんが、豊富な人生経験と、児童・福祉を含めた知識、社会福祉主事の経験などが求められることがあります。

現在すべての福祉事務所に家庭児童相談室が設けられているわけではありません。
しかし最近では青少年の家庭内暴力や引きこもり、登校拒否といった問題がクローズアップされているため、今後もこのような相談機関の必要性はますます高くなっていくものと思われます。

言語聴覚士（ＳＴ）

医療や福祉の分野でリハビリの専門家というと、理学療法士や作業療法士を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

それらと並びリハビリテーション医療で重要視されている職種に「ＳＴ（スピーチセラピスト）」とも呼ばれる「言語聴覚士（ＳＴ）」があります。

言語聴覚士は色々な原因で言葉や聴覚に障害を持った人を対象に、専門的な知識をもとに訓練や指導を行ない、機能回復をはかる言語聴覚訓練のエキスパートです。

まず言語聴覚士が障害の程度を判断するのに必要な検査をします。
その検査結果に基づいて医師や歯科医師が診断を行ない、医師が通常の医療では回復が困難であると判断した場合、言語聴覚士によるリハビリに入ります。

言語聴覚士が行なう療法は、コミュニケーション障害が主ですが、摂食障害や嚥下障害も訓練の対象に含まれ、その仕事の内容は広範囲にわたります。
法律上では医師の診断後、聴力検査や嚥下訓練は医師の指示が必要とされていますが、それ以外の訓練や指導では指示が必ず必要というわけではないため、特に福祉の現場では、言語聴覚士には大きな裁量権が認められています。

今では平均寿命が延び、脳血管障害などによる高齢者の言語障害が増えてきました。
それに従い、言語聴覚士はこれまでは病院などの医療施設に比較的多く就職していましたが、今後は福祉の分野での採用も伸びてくると思われます。

言語聴覚士は、まだできて１０年足らずの新しい国家資格です。
この資格を取得するには、養成学校で３年以上学ぶ、大学などで２年以上修業して指定科目を履修し、指定養成施設で２年以上専門知識を学ぶ、などの受験資格を得た上で、国家試験に合格しなければいけません。

言語聴覚士国家試験の試験事務等は（財）医療研修推進財団が行なっていますので、受験資格等の詳細はそちらに問い合わせると良いでしょう。

ケースワーカー・ソーシャルワーカー

福祉の分野で活躍する人の中に「ケースワーカー」「ソーシャルワーカー」と呼ばれる人がいます。

一般に、福祉事務所の相談員がケースワーカーと呼ばれることが多いですが、ケースワーカーとは、さまざまな困難や問題を抱えている人に対して、相談や助言、支援をする人の呼び名です。

一方ソーシャルワーカーの仕事もこれと同様ですが、従事する仕事や職場によってその呼び方が変わるのです。
つまり、社会福祉施設では生活相談員が、児童福祉施設では児童相談員が、「ケースワーカー」や「ソーシャルワーカー」の仕事をこなしているわけです。

老人ホームの生活相談員は、入所者の相談にのって援助するだけでなく、一人ひとりの援助プラグラムの作成、福祉事務所や医療機関との連絡調整、入所者の家族への援助などを行うほか、施設内での人間関係の調整や、地域との交流を深めるためのボランティア受け入れなど、非常に広範囲な仕事を行っています。
このように福祉に関する幅広い知識と、豊富な経験が要求される職種といえます。

福祉事務所などの公的機関への就職には、地方公務員試験を受験し合格しなければなりません。
この試験では、ケースワーカーに必要な知識のほかに当然、一般教養を中心とする試験も行なわれます。

また試験に合格しても、ケースワーカーやソーシャルワーカーという名称での募集ではなく、生活指導員、児童指導員、相談員という職種での募集がほとんどで、一般職に配属される場合もあります。

民間の福祉施設でも募集を行なうことがありますが、ほとんどは欠員補充や業務拡張のための不定期募集です。

同じ仕事内容とはいっても施設によって方針が異なりますので、学生で将来このような職種をお考えなら、実習やボランティアでいろいろな施設を回ってみてはいかがでしょうか。

精神科ソーシャルワーカー

福祉の仕事といえば高齢者や障害者に関わる内容のものが多いのですが、その中でも精神障害児者と関わる仕事に精神科ソーシャルワーカー（ＰＳＷ）があります。

精神科ソーシャルワーカーは、精神障害児者やその家族が社会生活を送る上で抱えている問題に相談援助をする仕事です。
1998年、精神障害児者の社会復帰を支援するための専門家の確保や養成を目的に、国家資格として「精神保健福祉士」が誕生しました。
これにより、従来から精神科ソーシャルワーカーとしてあった職域が国家資格化されました。

精神病院などの医療機関、精神障害者生活訓練施設・精神障害者授産施設などの福祉の機関、精神保健福祉センター、保健所などが主な職場です。
医療機関では患者や家族との面談、関係機関との連絡調整、社会復帰に向けての援助を、保健所などでは、地域訪問、講習会や啓蒙活動、断酒会活動への援助、地域資源の開拓といったより地域に密着した業務になります。

精神保健福祉士になるためには、年1回行なわれる国家試験に合格しなければいけません。
受験資格は、保健福祉系の大学等を卒業するほか、一般大学を卒業後、精神保健福祉士養成施設を卒業する、指定施設での実務を積んだうえで養成施設を卒業する、などの方法があります。

なお社会福祉士の資格を持っている人は、養成施設を卒業すれば国家試験が受けられますが、その際、申請により免除される受験科目もあります。
また精神保健福祉士養成施設には、通信制や夜間課程を設けている学校もありますので、働きながら勉強をして資格を取ろうと考えている人にとっては大変便利です。

保育士

保育士は、保育所などで就学前の子どもたちのお世話をする福祉の従事者で、以前は保母さんと呼ばれていた職業です。

保育士は、保育所や乳児院、その他の児童福祉に勤務し、そこに通う、あるいは入所している子どもたちに食べる・眠る・排泄するといった基本的な生活習慣を習得させ、健康管理やしつけも行ないます。
障害を持つ子どもたちを預かる福祉施設では、子どもたちの日常のお世話もします。
子どもたちと直接関わる福祉の仕事を選ぶなら、まずは保育士の資格を取得するのが就職への第一歩です。

近年では、出産後も働く女性の増加に伴って両親共働きというケースが増加し、それとともに夜型延長保育、夜間保育といった需要が多くなってきました。
このように子どもの生活を２４時間の中で見通した対応が求められたり、０歳児保育や障害児保育、アレルギー児への対応の配慮など、以前とは違った課題を抱えるようになってきています。

保育士を目指す人は、子どもが好きであることが第一の条件ですが、それとともに子どもへの正しい理解と深い愛情にまで高められるかが重要になってきます。
さらに一人ひとりの子どもの実態や行動をよく観察し、常に細やかな面にまで配慮が行き届いていかないといけません。

特に保育所以外の養護施設や障害児施設などの児童福祉施設で働く場合は、子ども達に対する人間的な理解と、社会的に自立できるような日常生活の指導や援助に目を向ける必要があります。

保育士の資格を取得するには、厚生労働大臣指定の保育士養成施設を卒業して取得する方法と、都道府県が実施する保育士国家試験に合格する方法とがあります。
いずれも、保育士の名称で保育業務を行なうには、保育士国家試験に合格後に、都道府県の備える登録簿に登録する必要があります。

仕事を持つ女性が働きながら安心して子どもを産み育てることができるための担い手となる保育士は、子育て支援社会を作るうえで重要な鍵を握っているといえます。

児童指導員

福祉の仕事は、高齢者や障害者に関わるものばかりでなく、子どもや母子と接する仕事も含まれますが、その中に「児童指導員」という職種があります。
児童指導員は、児童福祉施設へ入所してくる子どもたちが健やかに成長するために、あらゆるケアをする仕事です。

児童福祉施設を大きく分けると、家庭の事情で子どもを預かる児童養護施設と、心身的に障害のある子どもが通う（または暮らす）施設の２つがありますが、ともに原則として０～１８歳までの子どもたちを預かります。

児童養護施設に勤務する指導員は、子どもたちと寝食をともにし、マナー・食事・掃除・勉強など、まさに親代わりとなって日常生活をサポートします。
幼い子どもの、読み書きや遊び、中学・高校など年齢の高い子どもたちの就学・就職などの相談を行なうなど一人ひとりが社会で自立できるように手助けをします。

さらに児童相談所や学校など関係機関との連絡業務も行なったり、児童の親と面接して子どもたちの成長を伝えるなど離れて暮らす親子の心の溝を埋めるための努力も行ないます。

一方、知的障害児や肢体不自由児といった障害のある子どもをみている児童福祉施設に勤務する指導員は、介助や療育の仕事が中心となります。
食事や排泄、衣類の着脱といった日常的なことを、子どもたちがひとりでできるように指導・訓練したり、身体の機能が少しでもよくなるように努め、保育士・栄養士・作業療法士・理学療法士など専門職のスタッフと連携し、細かな生活指導計画を立てて子どもたちを支援します。

視能訓練士

医療分野のリハビリに関する専門職としては知られていても、福祉の分野では今のところあまり知られていない職種に「視能訓練士」があります。

視能訓練士の仕事は、「見る」という人間の基本的な機能に障害を持つ人に対し、眼科医の指示のもとでその度合いを検査したり、機能回復のための訓練にあたります。
以前は、斜視や弱視などの障害を持つ人の機能回復のための訓練を行なうときに必要な国家資格でしたが、1993年の法改正により、眼科一般分野で検査などもできるようになりました。
まだ有資格者は少なく、特に男性の割合は１０％以下で、今のところ女性の多い分野になっています。

視能訓練士の仕事の内容は、検査業務とリハビリ業務に分かれます。
検査業務は、視力検査、視野検査、眼底カメラ撮影、超音波検査など、目に関するさまざまな検査を行なったり、眼鏡やコンタクトレンズをつくる際に必要な、視力検査や眼圧検査を行なったうえでの処方箋を書きます。

リハビリ業務としては、矯正訓練が主で、視覚が発達する小学校低学年までに正しく矯正し、視力や視機能の回復を目指します。
これは一般的には何年もかかります。

最近では老化による疾患や糖尿病などによって視力が低下した人に対するリハビリ指導も増えてきており、訓練対象が乳幼児からお年寄りまでと幅広くなっています。

現在、視能訓練士は、総合病院や国立病院、大学病院など規模の大きな病院の眼科がほとんどです。
しかし高齢化に伴い白内障や糖尿病性の網膜症などが多くなったため、福祉の分野でも視能訓練士が行なうリハビリに期待が高まってきています。

この視能訓練士の資格を取得するには、国家試験に合格しなければいけませんが、受験資格は、
・高校卒業後、指定の視能訓練士養成施設で３年以上専門知識や技術を学ぶ。
・大学、短大、看護士養成所等で２年以上修業し、指定科目を履修したのち、厚生労働大臣が指定する養成施設で１年以上専門知識や技術を学ぶ。
・海外で視能訓練士に関する学校を卒業して免許を取得し、厚生労働大臣から日本で学んだと同じ技術があると認定を受ける。
以上のいずれかで国家試験を受けることができます。

義肢装具士

不幸にも事故で体の一部を失ってしまった人や、病気のために体のどこかがうまく機能しなくなってしまった人たちのために役立つのが、義肢装具です。

義肢とは、そのような人の体の欠損部分の代わりをしたり機能を補ったりする義手や義足などのことです。
そして装具とは、体の機能に障害を持つ人の機能回復を図り、機能低下を防ぐために装着する器具をいいます。

近年の義肢や装具は、最新の医療理論にもとづき、ハイテク技術が用いられるようになり、その性能の向上や適合精度の高さには目を見張るものがあります。
これらを医師の支持にもとづいて製作し、患者に対して適合を行なうのが、義肢装具士の仕事です。
製作はほとんど手作業で行なわれるため、義肢や装具を身につけた人がいかに苦痛や違和感なくスムーズに行動できるような義肢・装具が作れるかが腕の見せ所となります。

義肢装具士は、このように義肢・装具を作りますが、こうした開発を通じて義肢・装具を利用した医療の普及や向上にも貢献しています。
ですから義肢装具の製作のノウハウだけでなく、設計や製図、デザイン、工作機械の操作技術、整形外科、生体力学、人間工学、システム工学、、リハビリテーションなど、さまざまな分野での知識が求められます。

他のリハビリテーション系の職種である理学療法士や作業療法士などの多くは、医療機関や福祉の職場で働いています。
しかし義肢装具士の資格を持つ人は、ほとんどが民間の義肢製作所に勤めていて、その製作所が契約を結んでいる医療機関やリハビリテーション施設、その他の福祉の施設などの治療現場に出張して業務を行なっています。
ですから医療機関などからの注文が殺到している製作所では、残業が多くなりがちなところもあるようです。

高校卒業後、義肢装具士養成校または養成施設において３年以上必要な専門知識や技術を修得すると、国家試験の受験資格を得ることができます。
そして国家試験に合格してはじめて義肢装具士になることができます。

心理判定員

心理判定員とは、障害者や児童の自立を助けるために、心理状態を調べて判定し、援助計画を立てることを仕事とする専門職です。

おもな職場は児童相談所で、相談所内の相談・措置・判定部門に心理判定員が配置されています。

次に多い職場は、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所で、訪れる本人や家族と面談し、本人の心理判定を行なっています。

また、少数ですが、身体障害者更生施設、精神障害者社会復帰施設などの福祉の分野でも、心理判定員の専門知識が必要とされています。
心理判定員は、今後、高齢者のいる福祉の分野でもますます活躍の場が広がって行きそうです。

具体的な仕事の内容についてですが、まず対象者の心理状態の把握とそのための検査があります。
心理療法担当職員や精神科医、小児科医と相談しながら検査を実施し判定を行ないます。
その判定にもとづき、クラブ活動やレクリエーションを通じた集団療法、面接による個別療法などを行ないます。

児童相談所などでは、心理判定員が各種の心理検査や面接などを通じて児童の心理判定を行ないます。
そして、臨床心理士などの心理療法の専門家が児童への指導や両親へのカウンセリングを行ないます。
しかし実際には、その両方を同じ職員が兼務しているのが一般的になっています。
また、心理判定員が国家資格になっていないため、一般の職員が心理判定員の仕事を行なっていることも多いのが実状です。

心理判定員になるための任用条件は、
・精神保健に関する学識経験を有する医師
・大学で心理学を専攻したか、これに準ずる資格を有する者
の２つです。
臨床心理士の資格を持っていると、採用に有利になる場合もあります。